導入事例紹介Vol.2
見守りシステムを活用した夜勤帯の職員の負荷軽減・利用者の安眠の確保
<相談窓口ご利用者様インタビュー>
社会福祉法人 青森社会福祉振興団 特別養護老人ホームみちのく荘
施設長 今 友明 様
見守りシステムを活用することで、利用者の安眠の確保や夜勤帯の職員の負担軽減に取り組んでいる特別養護老人ホームみちのく荘 今施設長に、介護ロボットを活用する効果や注意点について伺いました。
現在、介護ロボット活用にどのように取り組まれているか教えて下さい。
みちのく荘では、「安眠プロジェクト」に取り組んでいます。利用者の夜間の安眠を促すことで、日中の活動量の増加と職員の夜勤業務の効率化を狙っています。このために、見守りロボット「A.I. Viewlife」を全床(60床)に、自動体位交換マットレスを約20台導入予定です。また、機器の他に高吸収おむつを導入することで、おむつの交換頻度を下げ、安眠を促そうとしています。日勤帯も含めると、コミュニケーションツールとしてインカム、介護記録ソフトへの入力を効率的に行うための端末(iPhone、iPad)を導入しています。現在導入途中のため、実績としての効果は未だわかりませんが、夜勤帯に2時間毎に行っている巡視を、見守りシステムによって行っていこうと考えています。
全床導入に至る前には、試験的に導入をされていたのでしょうか。
「Neos+Care」という見守りシステムを、全床の約2割である10床に導入していました。この見守りシステムの導入で効果が出たので、ベッド周りだけでなく、室内全体を広角のカメラで見守ることができる「A.I. Viewlife」を大規模に導入しようと考えました。
見守り支援ロボットの導入を検討された背景を教えて下さい。
夜勤帯の職員の精神的な負担を軽減し、効率化したいと考えたからです。例えば、利用者60人に対して夜勤者が3人いる場合、1人が休憩に入ると60人を2人で見なければいけません。複数同時にアラームやナースコールがなった際は、どうしても対応できない場合があるので、ある程度視覚的に手元で確認できるようにできれば、事故が予防でき、対応が必要なところに集中して人手を回すことができると考えました。
「Neos+Care」導入前は、センサーマットを使用していましたが、アラームは鳴っても部屋の中で何が起こっているかがわからないため、必ず部屋に行かなければなりませんでした。例えば、ベッドから足をおろしただけで、訪室しなくてもよい状況でも、夜勤者は走ってかけつけなければなりませんでした。
導入による施設の方々の声は如何でしょうか。
夜勤帯の業務が楽になったという声がありました。手元で何が起こっているのか見えると、安心できるためストレスを緩和する効果がありました。感覚的には、不必要なアラームの回数の7~8割程度を削減できていると思います。ある利用者については、導入前には1ヶ月で540回訪室していたものが、導入後には124回になりました。一方で、日中に利用者が部屋を行き来している時にもアラームが鳴ってしまい、音のストレスが課題として残っています。
導入にあたって、相談窓口からどのような支援がありましたか。
「Neos+Care」を紹介頂き、展示場で機器を見せて頂いた後、貸出と製品のデモンストレーションを見せてもらいました。また、利用できる補助金についても紹介いただきました。
見守りシステムとは別件ですが、トイレに座って用を済ませたいと強く希望している利用者のために、移乗支援機器の導入を検討した事があります。利用者の体に合わず、導入には至りませんでしたが、機器をお借りして、実際に効果の検証ができる事は非常に重要だと思っています。他の施設でうまく使えていても、施設によってニーズが違うため当てはまらない事もありますので。
職員が効果に納得していないと、機器の導入はスムーズに進みません。高吸収オムツについても、導入前に複数の職員が実際に使ってみて、不快感がないか等確認し、意見交換をした上で導入しています。利用者に使用するものは、まず、職員が身をもって体験する、というのが当法人の考えです。
介護ロボット相談窓口の貸出しを利用して、
利用者一人のために、機器の導入を検討することは、力がいることと思いますが、そこにはどのような思いがあるのでしょうか。
当法人の理念として「人ひとりひとりの心地よさ」を掲げています。費用対効果はもちろん考慮しますが、まずは利用者のニーズにどれだけ応える事ができるかを最大限考えるようにしています。一方この理念の徹底は、職員にとって大変な部分もあります。理念の徹底にあたる職員の負荷を軽減するものとして、テクノロジーの積極的な活用を模索しています。
介護ロボットを検討している施設が、注意したほうが良い点はありますか。
ロボットを導入する目的をしっかり持ち、効果を検証した上で導入を決めたほうが良いと思います。当法人ではトップダウンで事業所の方針を決め、機器導入によって目指す姿を打ち出します。利用者のケアがどのように良くなるのか、自分達の仕事の負担をどのように減らすのか等です。何のために導入するのかを職員が理解できないと、ただ負担が増える事になってしまいます。
なお、当法人ではISO 9001を取得し、改善活動に関するPDCAを回す土壌を作っています。年度初めにはトップダウンで事業所の方針と目標を決め、課題を抽出した上で実行に移す、といった流れです。目標は、「夜勤帯の訪室回数を何%削減する」といった具体的なものを設定しています。トップダウンだけでなく、月に1度にある現場リーダークラスの会議から課題を抽出して、方向性を決める事もあります。
みちのく荘様では、機器のデモンストレーションの際も、上層部の方と現場職員の方が一緒になって、忌憚なく質問や意見を出し合っている場面を何度も拝見しました。このような風通しのよい風土はどのような部分から生まれているのでしょうか。
本当に利用者のためになるのか、一人ひとりが利用者のケアに目線が向いているという点で、上も下もなく共通意識を持てていることが、そのように感じられる理由かもしれません。
相談窓口に今後期待する役割について教えて下さい。
ロボット導入を考え始めた介護施設は、どんなロボットを導入したら良いのか分からないのではないかと思います。ロボットを導入することで、業務がどう変わるのかがうまく伝われば良いと思います。また、基盤となるスマートフォンやタブレット端末、通信環境が整備されていない法人もかなりあると聞いています。介護ロボットの導入を検討する前に、このような点も含めて施設を支援していただければ良いのではと感じています。
また、自分たちでもアンテナを貼って情報を集めようしていますが、集めきれない情報もあります。当施設の課題に沿って移乗支援機器を紹介いただいたこともありますが、そのような情報をいただければ選択肢が増えてありがたいです。
相談窓口からのコメント
社会福祉法人 青森県社会福祉協議会
介護啓発・福祉機器普及センター所長
青田 俊枝(業務アドバイザー)
当相談窓口では、事例集のような紙媒体では伝わりにくい施設の生の声や導入効果を、展示場で機器を見ていただきながらご案内しています。
また、介護ロボットに限らず、通信インフラの補助金の支援もご紹介しています。
コロナ禍では、窓口に足を運ぶ事ができない施設の方には、ZOOMを活用した機器紹介やご相談にも対応しておりますので、気軽にお問い合わせください。
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インタビュー支援:NTTデータ経営研究所 情報未来イノベーション本部先端技術戦略ユニット
HealthcareImplementationグループ 山内 勇輝