1. HOME
  2. お知らせ
  3. 導入事例紹介Vol.1

お知らせ

導入事例紹介Vol.1

介護ロボットを活用したノーリフティングケアの実践
<相談窓口ご利用者様インタビュー>

社会福祉法人平元会 特別養護老人ホーム正寿園 主任生活相談員 中田 太様
※現在、中田様はデイサービスセンターポピーの管理者をされています。

中田様

青森県介護啓発・福祉機器普及センターでは、介護ロボットの活用による介護施設の課題解決を支援しています。今回は、介護ロボットや福祉機器を活用してノーリフティングケアに取り組んでいる 社会福祉法人 平元会 中田様に介護ロボット活用のきっかけや効果、導入時の注意点について伺いました。

正寿園外観

介護ロボットや福祉機器の活用を検討されたきっかけを教えて下さい。

当時(5~7年程前)、全国の介護施設はどこも人材不足や職業の人気のなさといった課題を抱えていました。当園は、人材にそれほど困っていた訳ではありませんが、お客様に対するケアの方向性について、現場の職員が見えなくなっている部分があると感じていました。現在では、全分野の介護マニュアルがありますが、当時はベテラン職員から介護業務を学ぶやり方が主流で、そこには、お客様にケアの効果を実感いただけるかという視点はあまりなかったように思います。当時は、お客様を抱えあげることは介護業界では当たり前でしたが、人に持ち上げられると誰でも痛いものです。そういった事情を職員側が分かっていないとケアの質は向上しません。

また、当園としての売りも必要だと感じていました。特養だから定員が埋まる時代ではなくなっており、「一人部屋がある」「四人部屋が安い」といったハード面だけでなく、ソフト面を充実する事が介護施設では大事です。そういった中で、県社協主催の研修会で、講師の方がリフトを自宅に導入し、奥様を介護している話を聞きました。これからは機器を積極的に活用する時代なのだと、施設全体で機器を活用したケアの向上と職員の負担軽減に取り組もうと考えたことがきっかけです。

当時導入された機器について教えて下さい。

リフトや電動ベッド、スライディングシート等の福祉用具から使いはじめました。最初はリフトを使用する事が怖いと言っていた方でも、人に持ち上げられるより、リフトの方が圧倒的に楽に感じられていらっしゃるようでした。ボタン一つで上げ下げできることは職員の体への負担も少なく、導入してとても良かったと感じました。

介護ロボットを使用し始めたのはいつ頃からでしょうか。

ここ3年ぐらいだと思います。色々なメーカーの製品のデモンストレーションをみましたが、現在はスカイリフトを導入しています。リフトは既に所有していましたが、ご自身の力で立ちたいというお客様が増えたことが、導入の理由です。お客様自身が足の裏を地面につけて立つ事は本当に大事なことです。トイレに行くためには、まず立たたなければいけませんが、立てない方は職員が介助するか、おむつをつけなければなりません。スカイリフトなら立つことを支援することで、最も尊厳が確保されるべき排泄が、自身の力でできるようになることは、大きかったです。

機器を導入し、どのような効果がありましたか。

お客様のADLが目に見えてよくなる事例がありました。また、職員からも体の負担が減ったという声がありました。更に当時、当園の機器を活用したノーリフティングケアが業界団体やメディアを通じて広がり、同じ課題を抱えていた施設が多く見学にきました。職員は、自分達が手本になっているのだと、意識が徐々に変わっていたように思います。お客様に負担をかけるケア方法を変えようと、職員が主体的に取り組みはじめました。この意識が1年ほどで出来あがり、軌道に乗ってからは、色々なところに良い相乗効果が生まれてきました。

それはどのような相乗効果でしょうか。

今では現場職員からボトムアップで使いたい機器を提案してくるようになりました。機器メーカーとのやり取りも直接行い、今では現場職員の方が機器に詳しい程です。このような取組の結果、現在ではお客様からの入居申込みが年間100件以上になり、ベッドの稼働率も高い水準を維持しています。稼働率が上がると給料の原資や新しい機器を買う予算を確保できます。機器を導入すれば、ケアの質は向上し、職員の負担は更に軽減されます。このような好循環が出来てきました。

また採用面でも、学生さんがよく見学に来るようになり機器を使ったケアを見た学生が就職するような例も出てきました。学生さんは機器にとても興味があるようです。

機器を導入するまでに、相談窓口がどのように関わったのかを教えて下さい。

機器導入を検討し始めた際は、相談窓口の青田さんに気軽に電話して、なんでも教えてもらいました。導入初期では、先進的な介護を行っている札幌の特養を紹介してもらい、実際に訪問させてもらいました。上層部が機器の活用方法を分かっていないと、現場職員のモチベーションが低下してしまうと思っていたので、現場を見られたことはとても良かったです。機器選定の際は、貸出やデモを行うことができる機器メーカーを数多く紹介してもらいました。カタログやHPで分かるのは概要だけで、使えるかどうかは分からないので、「こういうものはないか」「借りられるものがないか」など、よく相談していました。その他にも、機器導入の補助金を申請する際に効果指標をどう書くかや、通信環境の導入に使える補助金を教えてもらいました。色々な人を紹介いただいたので人脈も広がったように思います。

介護ロボット相談窓口 展示場で情報収集する正寿園の皆さん

これから介護ロボットを導入しようと考えている施設が注意すべき事はありますか。

機器を使う方針や、どう使いたいかという明確なビジョンがないまま機器だけ導入すると、現場職員はどうしたらよいか分からなくなってしまいます。また、予算や残業の付け方など、現場職員だけで判断できない事もあります。当施設では経営層と現場職員で委員会を組成し、機器導入を業務の一環として位置づけることで、職員を後押しする体制をつくりました。今では現場職員が中心に委員会を運営していますが、立ち上げ当初は園長や私がトップダウンで残業代の取扱いを決めていました。また職員が意欲的に取り組んでも、周りの職員の協力を得られず、せっかくの良い取組が押しつぶされてしまう事もあります。1つの成功事例を施設全体に共有したり、職員の負担をいかに減らしてあげられるかを考える人が必要です。取組の進め方が分からなければ、相談窓口の青田さんに電話されてみるのも良いと思います。

県社協 青田相談窓口からのコメント
社会福祉法人 青森県社会福祉協議会
介護啓発・福祉機器普及センター所長
青田 俊枝(業務アドバイザー)

施設の方には、かしこまって相談をするというよりも、気軽にお電話をいただいたり、足を運んでいただいたりしたいと思います。様々な介護ロボットを展示していますので選択肢や視野を広げていただき、施設の課題に合った機器の選び方・使い方を見つけていただきたい。

相談窓口の役割は、そういった場を提供しながら、施設の方の伴走支援を行うことだと認識しています。

活用事例のご紹介や無償貸出も実施していますので、積極的に相談窓口をご活用いただきたいと思います。


お問い合わせはこちら
インタビュー支援:NTTデータ経営研究所 情報未来イノベーション本部先端技術戦略ユニット
HealthcareImplementationグループ 山内 勇輝